村上春樹の比喩表現を味わう−『パン屋再襲撃』より−

ひつじ先生より

本日より、村上春樹の比喩について、魅力的なものをいくつか紹介したいと思います。オススメする短編から比喩をいくつか味わっていこうと思います。

ひつじ先生がオススメする短編『パン屋再襲撃』

あらすじ

「僕」は成り行きから妻にパン屋襲撃の話を持ち出す。「耐え難いほどの空腹感」から忘れていた事件を思い出したのだ。「僕」と妻は夜中に同時に目を覚まし、二人ともひどい空腹感に襲われていた。この時、かつてこれと同じような経験があったことを思い出す。それは、十年前、相棒と二人でパン屋を襲撃したときのことだ。しかし、それは 「犯罪」ではなく 「交換」に終わってしまった。そのパン屋の主人はクラシック ・マニアで、ワグナーの序曲集を最後まで聞けばパンをやると彼に言われた。その後、いろんなことに変化が起こり、元には戻らなくなってしまった。その時の何か重要なまちがいが、一種の 「呪い」のように今も「僕」につきまとっている。妻はその 「呪い」を解かない限り、彼女も含めて「僕 」は一生苦しむことになると言う。そこで、今すぐもう一度パン 屋を襲撃してその「呪い」を解くしかないと妻は言うのだ。車で二人は深夜の東京をさまよったが、開いていたのはマクドナルドだけだった。純粋のパン屋ではないが、それで妥協することにし、「僕」たちはビッグマックを三十個奪い、コーラの分の金は払った。その後、二人は心ゆくまでハンバーガーを食べた。

比喩表現を味わう

オズの魔法使い』に出てくる竜巻のように空腹感が襲いかかってきた

 

夜中の2時前、二人を空腹感が襲う場面。この比喩によって、あまりにも突然、しかも偶然自体が起こったことがわかる。

彼女は11月のリスのようにこまめに台所の棚を探しまわり、

 

彼女が空腹感を埋めるために、食料を探す場面。彼女の様子がありありとわかる。

「よくわからないわ」と妻は言って、僕の顔をじっとのぞき込んだ。それはまるで夜明けの空に色あせた星の姿を探し求めるような目だった。

主人公の僕と相棒がかつてパン屋を襲撃した事実について妻に話した場面。特徴的な表現。正直、イメージが膨らみづらい表現だが、ここが村上春樹らしい表現と言える。

何年も洗濯していないほこりだらけのカーテンが天井から垂れ下がっているような気がするのよ

主人公の僕の「呪い」に関して彼女がどのような存在として感じているのか答える場面。この比喩を見ると、何とかしてその呪いを解かなければという思いになる。

肉食鳥のような鋭い視線

僕と妻が車に乗ってパン屋を探す場面。彼女が真剣であることがわかる。

ひつじ先生より

更新が久しぶりになってしまいました。なかなか習慣化するのは難しいです。いくつか比喩をピックアップして紹介しましたが、村上春樹の比喩は、文章に非常に溶け込んでおり、違和感がないところに魅力があるのではないか、と思います。特に初期の作品には直喩が多用されています。そのような場面で自分だったらどう表現するのか?という視点で考えて見るのも面白いかもしれませんね。

また、この短編小説は、ひつじ先生が好きな短編です。トップ10には入りますね。初めて読んだ時、思わず「マクドナルドかい!!」ってツッコミたくなりました。それだけでなく、この短編は物語の展開が早く、次々とスリリングな展開があります。表現を味わう前に、かなり作品のストーリーが面白いです。

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