小説教材をどう教えるか(教材研究のポイント)

はじめに

もうすぐ4月です。コロナウィルスの関係で通常通り授業が開始できるか少し不安ですね。今、私にできることは、これからのことを見据えて、新学期の準備をまとめていくこと。

本日は、「小説」教材をどのように教えるのか。を考えてみたいと思います。

以前のツイートですが、小説教材では「教えるべきこと」をはっきりする必要があると思っています。

「評論文」とは違い「小説」は何を教えれば良いかが明確でなく、そこに混乱が生じているのだと思います。もうベテランの先生方にとっては、そんなんわかってるよ、と思われる内容になります。高校生に対して、これから「小説」を学ぶ上でどんな点に気を付ければよいかを説明します。

 よく言われることですが、「現代文の答えは本文の中に書いてあるからそれをしっかり読めば大丈夫」と。これは、実はそれは半分正しいですが、半分ウソです。なぜなら、問われる心情に関しては「はっきりと」その心情は書かれないからです。私が思うに「はっきりと」心情が書き込まれた小説はツマラナイです。大学入試でも問われる「小説」は、あくまで本文を手掛かりに、前後の文章から読み解くことができる一定の解釈なのです。

 では、どのように「授業」を創って行けば良いでしょうか。私は、ある程度「正確に読める」部分と「豊かに読める」部分を区別して学習していくことが必要だと思います。まず「正確に読める」部分からお話したいと思います。

1 状況設定を読む

まず、小説を読む際には、「状況設定」を読む必要があります。その際、ポイントとなるのは、以下の3つです。

ポイント

①登場人物の設定(外見・性格・身分・職業など)

②時代設定(いつごろの話か)

③舞台・設定場面

まず、①は「人物像」を正しく読むことです。その登場人物の「外見や容貌」をおさえることで、読者がイメージを抱きやすくなります。また、性格を表す表現としては、身振りの癖・会話(セリフ)などに注目すると良いでしょう。また、対比的な登場人物もいますので、その場合も同様です。もし、小説の最初の場面で、「状況設定」が明らかになる場合には、だいたいの登場人物が何かしら「課題や欠落」を抱えていることが多いです。授業で扱われる小説には、大体の場合、この「課題や欠落」が解決(進歩)・決着される形で話が終わることが多いのです。入試で問われたときは、一部分のみの掲載になりますから、リード文などにそのような「課題や欠落」が書かれます。見落とすと話の骨格が掴めませんので注意してください。

また、人物同士の関係性も必要です。「親子」「夫婦」「友人」「同僚」「先輩・後輩」などその人物同士がお互いにどのような感情をもっているのか、明らかにしておく必要があります。物語が進んでいくと、その関係性が変わっていくこともあります。少し幅広い視点から考えてみることが重要なのです。

このように「人物関係図」をイラストを交えながら書くことも理解につながります。

②の「時代設定」を読むことも非常に重要です。ポイントはその時代での「常識的な価値観」です。例えば、明治時代においての「結婚」はどういうものかをわからず、『こころ』を読んでしまうと、大きな誤解を招きかねないです。現代小説であっても、80年代と2000年代では価値観は違うものもあります。最近、AL型の授業でこの部分を無視した授業展開をされている場合があります。この部分は、あくまで教師が主導になって教えるべき項目なのではないかと考えます。また、小説によっては、「近未来」の時代設定をされている場合もあります。この場合も同様で、今とはどのように「価値観」が違うのかを明らかにする必要があります。この場合は、その時代設定と読み解くことで作者の〈批評精神〉が浮き彫りになります。後日、具体的な事例と共に紹介したいと思います。

③「舞台・設定場面」これは、どこに登場人物が“いる“のかを読むことです。その登場人物が「東京」なのか「地方」なのか、もっと詳しく見ると「家の中」なのか「学校の中」なのか、これを上の①・②と合わせて捉えることで、「正確な」読みにつながります。

「ストーリー・あらすじ」を読む

先ほどまで述べた「状況設定」に加えて、「ストーリー・あらすじ」を捉えることは「正確に」読む上で、非常に重要です。この際、重要なことは主に二つです。

ポイント

①登場人物の「行動」

②登場人物の「会話」

正直、この二つのポイントに関しては「何が起こった?」とざっくり聞いて、それに答えることができれば十分です。ただもう少し詳しく説明します。

 まず①ですが、どんな「行動」をしているか、ということです。もちろん登場人物が「行動」を起こさない場面もあります。「登場人物がどんなことをしたのか。」を捉えることです。ただ、授業の中で、いちいち確認していると正直オモシロくないという反応があります。重要なのは、次の展開や最終的なクライマックス、伏線の回収に繋がる「行動」に注目することです。あえてこの部分を確認しないという方法もありますので、注意してください。

 次に②ですが、「会話」は登場人物同士との関係性を示したり、次への行動を起こすきっかけになる点で非常に重要です。「どんなセリフを言ったのか」です。これも後々、あの時のセリフがあったから変わったということもあるので、注意が必要です。小説を読んでいて、セリフだけに注目して読んで「あらすじ」を捉えるという方も見えます。小説のジャンルによっても可能かもしれませんが、大事なのは、会話は行動とセットで考えることです。同じセリフだとしても、それを言う態度が違っていれば印象は全く変わります。

 この「ストーリー・あらすじ」を理解しているかどうかを確認する方法を二つ紹介します。

方法

①「あらすじ」を300字〜400字程度でまとめさせる。

② 穴埋めプリントに記入させる。

 まず①ですが、これは原稿用紙を1枚配布して、どんな内容かまとめさせるというものです。小説の長さにもよりますが、「心情」をできる限りどのようなストーリーなのか、特に「行動」に注目させてまとめさせると良いでしょう。少し長い小説になる場合は、場面ごとに「小見出し」をつけてみると良いと思います。

 ②ですが、これは、教師が自作したり、教科書付属のデータを使用して、穴埋めをさせます。だれがその行動をしたのか、書き込む形式です。一見単純な作業に見えますが、これを行うことで、生徒は前後の文章も読みますから、ストーリーを把握することにつながるのです。

3 主人公(中心人物)の変化とその要因を読む

これは、小説で登場する人物が最終的にどのように変化するのかを読み取ることです。私も授業で実践することであるが、早稲田大学教授の石原千秋先生の手法で考えさせています。それは

 参考著書はこちらです。

 例えば、芥川龍之介『羅生門』を例に考えるならば、例えば、①「下人が飢え死にをするか盗人になるか迷う物語」②「下人が盗人になる物語」だとまとめることができます。このように、実際にどのように変化していくのかを一文でまとめる訓練をすると、小説の「主題」を読み取ることにつながります。

 また、そのように「一文」にまとめたあと、「その変化した要因」を考えさせます。『羅生門』であれば、ものすごく簡単にまとめると「老婆の話を聞いた」から、です。この部分をきちんと

4 対比的人物とその効果を読む

 これは、小説には主人公だけでなく、対比的人物がいます。『羅生門』で言えば「老婆」、『山月記』で言えば「袁傪」、『舞姫』で言えば「エリス」とか「相沢」です。この対比的人物は、主人公の考えを際立たせたり、主人公に影響を与えたりします。対比的人物は小説によっては真逆の性格として描かれることもありますから、その点、関係性に注目することも重要です。

5 象徴的イメージなどの表現の効果を読む

 この部分からは「豊かに読める」部分になります。もちろん、ある程度根拠づけることができれば「正確に読める」部分に入るとは思います。この部分は解釈が分かれる部分にもなりますから、正直一つの答えに絞るのは難しいです。

 例えば、『山月記』の「『白く光を失った月』が何を表しているか。」という問いや、『こころ』の「『襖』は何を表しているか」。という問いに関しては、ある程度解答を絞ることができても、どうしても絞りきれず多様性が出てきてしまいます。重要なのは、生徒が出した答えに関して「どうしてそう思うのか」という根拠の部分です。教師としては生徒の多様性を認めつつも、どの「根拠」に向き合わせていくことが重要なのではないかと考えています。

おわりに

ここまで読んでいただきありがとうございます。不充分な点があるかもしれませんし、伝わりづらい点があったら申し訳ございません。

意図としては、一つの教材に絞らず、できるだけ「汎用性」のある記事になればと思って書きました。また、ただ入試問題を解くという視点ではなく、小説とどう向き合っていくのか、分析の方法を考えて記事にしました。

また、明日以降、小説の読み方・教材研究に関して追記していく予定です。

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